私のデビューが決まった。

入社して2ヶ月は経過していたと思う。マネージャーから「アポイントカード」を渡される。アポイントカードとは、テレアポの子が家庭教師に興味のある家の詳細を書き込んでくれた貴重なメモのことで、訪問が決まる前にはマネージャーも念のために確認の電話を入れている。

> 『家庭教師派遣業シリーズ①』
> 『家庭教師派遣業シリーズ②』

分からない人の為に説明しておくが、家庭教師派兼業は、中学生の子がいる家の名簿を持っている。テレアポの子は「家庭教師に興味ありませんか?」と片っ端から電話を入れる。A社の場合は毎日10人くらいのアルバイトの学生が電話をかけている。その電話で少しでも興味がある家があったら、アポイントカードに書き込みマネージャーに渡すシステムになっている。テレアポの子は無理に押し売りする必要はなく、あくまでも「少しでも興味がある家」を探すのが仕事になる。マネージャーはアポイントカードを参考に、もう1度電話をかける。その電話で、訪問日時などの詳細を決めていく。たいていは子供が勉強しないで困っている母親なので、愚痴や相談が始まり長電話になることもある。マネージャーが私たちが訪問先でウェルカム状態になるに電話で頑張ってくれているわけだ。

さて、私が、訪問することになったお宅は、中学1年生の女の子だった、訪問予定は夜の19時くらいだったと思う。私はマネージャーから簡単な流れをアドバイスされ「とにかく行ってこい!」と応援されながら会社を出たことを覚えている。

とにかく、私にはやさしいマネージャーだった。

19時に着く予定だったが、道に迷い、遅れてしまった。そしたらマネージャーから電話がかかってきた。「まだ来ないのよ!」って電話がA社にかかってきたとのこと。私は焦った。ダッシュで家に向かった。ピンポンを鳴らすと、母親と中学生の女の子が玄関まで出てきた。

私は、家にあがらせてもらえるかと思ったが、玄関先で説明をして欲しいとのことだった。マネージャーとの打ち合わせでは部屋にあがらせてもらえることが前提だったので混乱した。

私は、さっそくトーク集どおりに説明をすることにした。最初は順調だったが、すぐに失敗を起こしてしまった。中学生の女の子に対して「太郎君さ~」と、何度も呼びかけてしまったのだ。なぜかというとトーク集に「太郎君」が何度も登場するため、つい太郎君と言ってしまったのだ。本来なら訪問先の中学生の子の名前を呼ぶところなのに、とんでもない失敗である。

1度ならいいが、3回以上は間違えてしまっただろう。その子も母親も不快な思いをしたに違いない。

結果は、トークはすっ飛んでしまうは、名前は間違うわで、最後のクロージングの決め言葉を言ったところで、「考えておきます」という返事が来ることは当たり前な状況でした。

ふがいない結果を、A社にいるマネージャーに電話で報告をした。とにかく戻っておいてとのことで、A社に戻ることにした。

デビュー戦は家庭教師の契約が取れず、もちろん報酬は0円で終わった。

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