この記事では法人として株式投資(株取引)をしている人、又はこれから法人として株取引を始めたい人が、決算処理をする際の流れなどをお伝えします。
法人は、特定口座は利用できず、強制的に一般口座になってしまうので、SBI証券のような証券会社が会計処理をしてくれません。自分で取引履歴を整理する必要があります。
また、個人の場合でも一般口座を利用している人も自分で会計処理をしないとなりません。
それと、簿記の勉強している人や会社で経理をやっている人なども役に立のかな・・・と思います。
私は、法人として株取引をしていて、経理も自分でやっていますので決算期になりますと、いろいろ疑問が出てきます。
- 現物株と信用株の決算処理の違い
- 手数料などはどうする?
- 配当はどうする?
- 決算時にポジションを持ち越した場合はどうする?
- 含み益が莫大になると法人税はどうなる?
- 洗替法って何なの・・・
- 移動平均法って・・個別法って・・・何なの
- 翌期に組み戻すって何なのさ・・・
意味の分からない用語が出てくると、嫌になってしまいますよね。
経理なんて学校で習いませんし、専門学校でわざわざ経理を習うこともしてませんので、完全に独学で経理をしています・・・・。それでも何とか大きなミスもなくやってこれたのはネットのおかげですね。
とはいえ、ネットだけの情報ですと、知りたい情報が1つのサイトにまとまっていなかったり、税理士の先生のサイトなどでは専門用語が乱立しすぎて混乱するんです。
というわけで、私がこの記事にまとめてみようと思いました。
設定
例)わはは株式会社 12月決算とする。SBI証券 法人口座を利用
法人の場合、個人の確定申告とは違います。
法人として証券会社を通じて株を売り買いする場合、売買目的有価証券扱いになります。
わはは(株)の経理は初心者。仕分けも分からない。
大きな勘違いをしなければ脱税になることもありませんし、慣れてしまえば、作業が面倒というだけですのでわざわざ高額なコストをかけてまでも税理士さんに頼むほどでもないのかなと思います。
表計算ソフトのエクセルが便利です。(エクセル風のフリーソフトでも可能です)
法人としての利益を確定させるためにすべての取引履歴を確認します。
取引履歴は、現物と信用で計算方法が違います。
現物株は2パターン、信用取引した株も2パターンの合計4パターンに分けて計算をしていきます。
ざっくり言えば、現物か信用か?期末内に決済したかしなかったかの違いだけです。
A 同一期内に売買した現物株
B 翌期以降に繰り越した現物株
C 同一期内に売買した信用取引株
D 翌期以降に繰り越した信用取引株
その他に、配当の受け取りと支払い(空売りの場合)を計算が必要です。
パターン1 現物、信用のいずれも同一期内に決済まで行った場合
A 同一期内に売買した現物株
2017年3月1日に、任天堂の株を株価10000円で100株購入。購入手数料は500円(税込み)
2017年3月31日に、同株を株価15000円で100株売却。売却手数料は500円(税込み)
利益 +50万円
手数料 -1000円
合計 49万9000円の確定利益
B 同一期内に売買した信用取引株
2017年5月1日に、ソフトバンクの株を株価5000円で100株購入。購入手数料は300円(税込み)
2017年5月31日に、同株を株価6000円で100株売却。売却手数料は300円(税込み)
利益 +10万円
手数料 -600円
合計 9万9400円の確定利益
AとBの合計
利益 +60万円
手数料 -1600円
合計 59万8400円のプラス
現物も信用も同一期内に決済まで行った場合、トータル損益を計算するのは、個人で特定口座で取引するのと同じで簡単です。
翌期に繰り越すポジションが無いため、含み益と含み損を計算する必要はありません。
実現した利益又は損失の合計が、法人としての行った株取引の結果となり、法人税の課税対象になります。
パターン2 今期に現物株を購入したが期中に決済させずに、ポジションを翌期まで持ち越してしまった場合
現物で株を買ったが、決済をしなかった場合でも、期末時点での終値で「決済した」と見なします。
2017年6月1日に、シャープの株を株価100円で100株購入。購入手数料は500円(税込み)
2017年12月31日になっても同株を持ち続けて翌期まで繰り越した場合。
年末の株価は、200円とする。
確定利益 +0万円
手数料 -500円
含み損益(未実現損益) プラス1万円
合計 9500円の 含み益
ポジションを持ち越したため、時価会計に基づいて計算をする必要が出てきます。
時価会計?と言われてもピンと来ない場合は、「期末に、未確定ポジションの損益をとりあえず計算する」と覚えてください。
証券会社は、あなたのポジションを勝手に決済することはないですが、とりあえず決済したことにするのが時価会計です。
パターン2の場合は、法人としての株取引の利益は9500円のプラスになります。決済していないのにもかかわらず、確定された利益のように
この含み益に対して、法人税が課税されます。
パターン3 今期に同一の現物株を複数回に分けて購入し、期中にすべて決済させた場合
2017年2月1日 株価100円 100株
2017年2月5日 株価200円 100株
2回に分けて、それぞれ100株を購入した場合で、
その後、2月20日に株価200円、2月25日に株価300円になった場合にそれぞれ100株ずつ決済した場合はどうなるのでしょうか?
普通に考えれば、
買値100円⇒200円で売却し、1万円の利益。
買値200円⇒300円で売却し、1万円の利益。
合計 2万円の利益
となりますが、法人の場合は、計算方法が違います。
現物株を複数回に分けて購入した場合は移動平均法を用います。
複数回に分けて価格の違う現物株を購入した場合は、買値の平均値を出して、ポジション決済するときは常に買値の平均値を基準に考えます。
移動平均法の計算方法は?
(買値×株数)+(買値×株数) を 合計株数で割る
(100円×100株)+(200円×100株) 割る 200株
買値の平均は150円
買値150円⇒200円で売却し、5000円の利益。
買値150円⇒300円で売却し、1万5000円の利益。
合計 2万円の利益
通常の計算方法と、移動平均法のどちらの場合も、2万円の利益となりました。これはなぜかと言いますと同一期内ですべて決済したので、移動平均法を持ちいらなかった場合と同じ結果になるのです。
パターン4 今期に同一の現物株を複数回に分けて購入したが期中に決済させずに、すべてのポジションを翌期まで持ち越してしまった場合
パターン2とパターン3を組み合わせて計算をします。
ポジションは、パターン3のときと同じく
2017年2月1日 株価100円 100株
2017年2月5日 株価200円 100株
2回に分けて、それぞれ100株を購入した場合とします。
期末の終値は300円だとしましょう。
この場合、買値の平均は150円となり、株数は200株なので、含み益が3万円のプラスとなります。
この3万円に対して法人税がかかります。
パターン5 今期に同一の現物株を複数回に分けて購入したが一部を期中に決済し、残りのポジションを翌期まで持ち越してしまった場合
ちょっとだけややこしくなりますが大丈夫です。
ポジションは、パターン3のときと同じく
2017年2月1日 株価100円 100株
2017年2月5日 株価200円 100株
2回に分けて、それぞれ100株を購入した場合とします。
その後、2017年3月1日に株価200円で100株を売却し、残りの100株は翌期に持ち越しとしました。
移動平均法による買いの平均値は150円なので、
買値150円⇒200円で100株を売却し、5000円の確定利益。
買値150円⇒期末の終値300円で、1万5000円の含み益。
合計 2万円の利益となります。
5000円の確定利益は、法人の利益となり法人税がかかります。15000円の含み益も法人税の対象になります。
法人で株式投資を現物でする場合は、移動平均法で買いの平均値を出してしまえばあとは楽です。
移動平均法が面倒なところは、現物で買い増しやナンピンを続けながら、売買を繰り返す場合です。
新しいポジションを追加するごとに平均値が変わりますので、その都度計算をする必要があります。
私の場合は、あまり売買を繰り返さないので、期末で一気に計算しますが、取引回数が多い人は大変です。
パターン6 信用取引株を一部は期中に決済、残りのポジションを翌期まで持ち越してしまった場合
信用取引の場合は、現物と違って移動平均法は持ち入らなず、個別法を採用します。
個別法の計算方法は?
個別法では、純粋に信用買いポジションと返済売りポジションを相殺するだけです。信用取引の場合は、SBI証券だと、標準では購入が古い順に決済されると思いますが、決済する相手のポジションを任意で選択することも可能です。
A 2017年8月1日 株価200円 200株を信用新規買い
B 2017年8月2日 株価210円 100株を信用新規買い
C 2017年8月3日 株価250円 100株を返済売り
200株は翌期まで持ち越し。
期末株価は300円とする。
株価250円(C)と株価200(A)を組み合わせて決済しました。
確定利益は、250円ー200円 ×100株 = 5000円の確定利益
期末時点
300円ー200円 ×100株 = 1万円の含み益
300円-210円 ×100株 = 9000円の含み益
小計 1万9000円の含み益
5000円の確定利益と、1万9000円の含み益に対して法人税が課税されます。
信用取引にかかる手数料はどうなる?
期中に買から決済まで行ったポジションは、手数料のすべてを乗せて計算できます。
では、翌期へポジションを持ち越した場合の手数料はどうなるのでしょうか?
- ・購入手数料
- 金利
- 逆日歩
- 管理費
- 名義書換料
私の場合は、信用取引の場合、決済するまでこれらの手数料は期末の含み損益にはカウントしていません。決済したときに一気に含めます。
ちなみに、現物株の場合は、購入手数料は買値に含めてしまいます。
たとえば、1000円で100株買ったときの手数料が500円だとしたら、
1000円×100株=10万円
10万円+500円 割る 100株 で 1005円の買値(取得費)としています。
パターン7 信用取引株を現引き、現渡した場合
現引きした時点で、信用取引ポジションを決済したとみなします(確定利益になります)。
この時点で、手数料等も清算します。
ちなみに、現引・現渡に手数料はかかりません。
同時に、現物の新規ポジションを持ったことにします。
購入費用は0円になりますので、信用ポジションで購入したときの株価がそのまま取得費になります。
法人口座で受け取った株式の配当金は、個人よりもお得
法人税では受取配当金の益金不算入制度があります。
受取配当金の益金不算入制度とは?
企業が行う配当の財源が税引後の利益であるため、税引後の利益を株主に配当したものを再度、株主から配当所得又は受取配当として税を徴収したら、同じ財源の所得に対して二重課税になる、ことを回避するための制度
ただし、受け取った配当の2分の1のみ法人税に課税されないようですね。
例えば、
年間で100万円の配当所得があった場合、
50万円 ⇒ 法人税の課税対象
50万円 ⇒ 課税対象外
法人税率が仮に20%だとすると、10万円も支払う法人税が減ることになります。
損益計算書
自分で年間の取引履歴をすべてまとめたら、
確定損益と含み損益が出るかと思います。
この金額を損益計算書に載せることになります。
例えば
1年間の確定利益 ⇒ 100万円のプラス
1年間の含み損益 ⇒ 50万円のマイナス
の場合
確定利益の場合の仕分けは以下のとおり
借方 有価証券 100 貸方 有価証券評価益 100
含み損益の場合は、期末に、
借方 有価証券 50 貸方 有価証券評価損益 50
として、いったん利益を確定させて、
翌期首に
借方 価証券評価損益 50 貸方 有価証券 50
として、前期末に確定とみなした利益分を損失と見なして相殺します。
洗替法(あらいがえほう)の処理方法
①帳簿価額→決算で時価評価をしても翌期首において再び取得原価に戻し、その取得原価を翌期の帳簿価額とする。
②売却損益→取得原価と売却価額を比べて売却損益を計算する。
有価証券の仕分け、簿記、洗替法についてはコチラのサイトが分かりやすかったです
> http://inuboki.com/2kyuu_syoubo/chapter4-1.html
損益を確定させる。 翌期首にその損益を戻す。
結果的には、翌期には前期末時点での含み損と同じ状態になる。
損益計算書にはこのように記載されます。
貸借対照表
売買目的有価証券は時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益とする。
法人で行う現物株取引に採用される 移動平均法は強制なのか?
有価証券を新たに取得した場合には、移動平均法又は総平均法のいずれの方法で一単位当たりの帳簿価額を計算するのかを選定し、取得した事業年度の確定申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署長に届け出ます。
この届出をしなかった場合には、移動平均法が適用されることになります。このことから、移動平均法が法定算出方法とされています。
SBI証券、現物の取引履歴の調べ方
口座管理>取引履歴>円貨建口座>約定履歴 をご利用ください。
2年以上前の履歴は、
電子 株式取引報告書 で検索
決算月 例えば3月決算の法人の場合、3月に1回も取引がないと株式取引報告書が発行されない。その場合、時価を計算するために保有銘柄の終値を手動で調べる必要があるので面倒。だったら1回取引をしてしまうほうが楽。
終値を調べるにはこのサイトが便利
> https://kabutan.jp/stock/kabuka?code=3664&ashi=mon
SBI証券、信用取引の取引履歴の調べ方
口座管理>取引履歴>円貨建口座>信用決済明細をご利用ください。
「一般口座」のメリットは皆無に等しいです。
法人口座の場合、一般口座しか選択できませんのでやむを得ません。
ただ、一般口座のメリットは、勝ち続けている間、税金が天引きされてないことくらいでしょうか。再投資に回すことができますね。個人の特定口座の場合は買った分は20%天引きされます。
ここまで説明してきましたが、本格的にトレードをしていない法人の場合は、含み損益が課税されないケースが多いらしいのです。
法人で株トレードを行った場合の「会計上」の決算処理を説明してきましたが、
最終的には、「税務上」の決算処理をした書類を税務署に提出します。
実は、
よほどのケースで無い限り、含み損益を「当期の損失」として計上することはできないのです。
含み損を計上できないとなると、当然ですが含み益も計上しないので、課税されないことになります。
以下の記事も参考に読まれることをおすすめします
あとがき
一気に書きましたので乱文です。
誤字脱字があれば訂正しないといけませんね・・・。法改正があったら対応もしないといけません。
この記事は備忘録として残します。
コメント